「世界で一番孤独な街」と呼ばれる、西オーストラリアの州都・パース。
世界のどの大陸からも離れ、オーストラリアじゅうのどの街からもずっと遠いことでこの名がついたのだとか。シティ(市街地の真ん中)といえどさほど人は多くなく、スワン川を挟んで南北に分かれているおかげでスッキリしており、安全で洗練された雰囲気。
2か所6か月ほどのファーム生活を終えた私は、主要な都市を時計回りでめぐりながらも、まだ1回も定住することのない根無し草生活にやや疲れぎみ。安宿のドミトリーはいろんな奴にあえて面白いけど、気も遣う。
いつだって思いがけないことは夜起きる
深夜12時。あまりに眠れなかったのでネットをチェックするついでに、夜の街を歩くことに。見つけたのは24h安心安定のマクドナルド先生。ミールセットをほおばりながら日本のニュースなどをチェックしていると、目の前に痩せた中年のおっさんが立ち止まり、
「お前の見ているそれ(ラップトップ)は、インターネットというやつか?」
うんそうだよ、というと私の隣に陣取りYoutubeでチャック・ベリーの“Johnny B Goode”を見ながらゴーゴー!などと上機嫌。正直、「なんだこいつ?」状態であった。
彼の名前はマーティン。25年以上前にアイルランドのとある町からやってきて、当初はトラックの整備士だったがいまは飛行機の整備士で、勤務形態は特殊でほとんど夜勤だが4-5日の休みがまとめてとれる、独身だが彼女がいて、最近シドニーに小さな家を買って云々・・・とアイルランド訛りでそれはもうよく喋った(4時間くらい・マジ)。
誘いには、乗る。乗るんだ
明日お前の宿のまで車で迎えに行くから、俺の勤務前の15時くらいまでピクニックしようぜ!じゃあまたな!と言って彼は去り、翌朝本当に迎えに来た。
見晴らしのいいキングス・パークで手作りサンドイッチ、コップがないのでジャムの空き瓶で紅茶を作るという色気のなさよ(だがそれがいい)。
がらくたのような糸の切れたマンドリンを弾き、しかし翌日には友達のインドネシア人の子を誘ってウェーブロックへ連れていてくれる気持ちのいい男だった。
車のサイドミラーでひげを切り、アイリッシュダンスとゲール語の教室、寒風吹きすさぶ港町フリーマントル(寒すぎ)、帰りの喫茶店でボトムレスコーヒーを飲みながら「しまった!遅刻すると同僚にビールを1ケース買わなきゃいけないルールなんだっ!」といって慌てて帰って行ったりした。
みんな、誰かと話したい
話に話を重ね、怪しさ満点の深夜のマクドナルドから、なんと最後はシドニーの滞在先の大家になり、10年たった今でも1年に1度聖パトリックデーに電話かカードを送りあう友人になるという展開に。
女だから、一人だから、そりゃみんな優しだろうさという声もあるけど、話しかけられたら話し返せばいい。それが突如として始まるのが夜のファーストフード店だったりする。
怪しもうと思えばいくらでも怪しいけど、けっこうみんな「誰かと話したい」んじゃないの?
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