日本で一番高い場所で起きる、面白いことの数々

どうせお金を貯めるなら、家賃さえもカットしてしまおう!勢いづいた私が、次に探したのは「住み込みバイト」。これなら経費ゼロ!なにもいらない!
季節は夏一歩手前。7~8月いっぱいの住み込みバイトの募集がたくさん出ているはずだとフロムエーを見てみると、大学生たちがやるであろうリゾートバイトが山ほど出てきます。そんな中に、

富士山での山小屋、2か月の住み込みアルバイト。日給8000円

なにこれ超楽しそう(第一印象)。

リゾバの定番といえば、冬のスキー場や、夏の沖縄や避暑地のホテルなどですが、富士山の山小屋がリゾバの欄に乗っているとは。しかもその募集している山小屋は、山頂にある4つのうちの一つ。つまり3776mです。そして富士山に入山したら、2か月ずっと下山することはありません。衣食住付き、出費が確実にゼロ。娯楽もない代わりに、すごい景色が手に入ります。なんだこれは。やるしかない。

全国各地から12人の同僚

履歴書を送って即採用。言われた通りに静岡県某所に集合、最低限の衣類(寒いから結構厚着も持って行った)をバッグに詰め、富士山の5合目まで登ります。なんとそこからは、山のような物資を積んだブルドーザー(!)に乗り換え、登山道とは別のブル道(と呼んでた)で3時間、一気に山頂まで運搬されます(すごい傾斜で転げ落ちそう)。

日本全国から集まった20~30代の楽しくも変わり者のヤングメンたちが大集合。女性は朝から晩までほぼ炊事、男性は力仕事とお土産の販売。そこの山小屋は宿泊がなかったので多少?楽ではありましたが、勤務時間は朝3時半起床~夕方9時に就寝という毎日。

日本で一番高い場所では、

①高度順化をせず一気に登るので数日は高山病でうなされる
②紫外線が強いので、日に焼けまくる
③とにかく必要な物資は週に2回来るブルドーザーで荷揚げする(なんと荷揚げ賃1kg500円!!)
④真夏だというのに気温は朝3度、日中は最高13度
⑤冷蔵庫は火山岩を積んでできた蔵に雪を入れたやつ
⑥水がないので雪解け水を集めて溶かし、風呂は週一回(しかも使い終わった割りばしを燃やして炊く!)

というエクストリームぶり。

絶景ここにあり

毎朝真っ赤に登る日の出、

午後になると広がる雲海、

夕方には富士山の影が見られます。

山頂ではいくら加熱しても水が100度では沸騰せず93度までしか上がりません。プロパンガスで必要なラーメンを作り、湯せんして甘酒やおしるこコーヒーなどを温めます。ごはんを炊くのは圧力釜、電気も限られているので暖房などは囲炉裏の炭!まるで江戸時代!爪の間は真っ黒に汚れるので、これまた限られた水で食器を洗いながら、都市生活からは隔絶された「本当にあるものだけ」で生活する知恵を身に着けました。

さすが日本一の観光地・富士山だけあって、登山可能な7月~お盆がおわるまでの1か月半は、日本全国から、海外からの観光客でごったがえします。個人・ツアー・自衛隊の人・(主にアメリカの)軍人さん、年齢は問わずちいさな子供から80歳以上のお年寄りまで。

面白いことする人大集合

日本で一番高いところでは、なにかスペシャルなことをしたくなる人が結構いるらしく、

「○○ちゃん(彼女の名前)、愛してる~!!」と叫ぶ人
「あの…お湯をください。ここでお茶をたてていいですか」という大学の茶道部の一団
・ミュージックビデオをとるために重い機材とともにやってきたあるミュージシャンと撮影クルー
登山者の髪を無償で切っているという旅人
メイドのコスプレをして登頂するのが趣味だというお兄さん
JAXAの職員だというロシア人
・山頂にある富士山本宮浅間大社で結婚式をあげた夫婦(もちろん神式の衣装です!)
・ピアニカとフルートを吹きながら登ってきた外国人のジャズミュージシャンたち(なんとアメリカで再会しました)
0合目→山頂→0合目まで1日で走り続けるワンダーフォーゲル出身者(まじで!?←マジです。)

面白過ぎます。そしてそんな気分にさせるすごい絶景なので、その気持ちは十分に伝わりながらもそれを遠巻きに見守る私たち。15時には人がいなくなってくるので、夕飯までの1時間はそれぞれトランプしたり、火口をぐるりと回るお鉢回りなどをしたりして過ごします。よくこんなところに富士山測候所作ったな…

約2か月の給料50万円を握りしめ、久々に味わう下界での、バイトの女の子4人でやった居酒屋での打ち上げはいい思い出。

ブルドーザーの運転手のおじちゃんにも「なんでこんなとこでバイトするのさ?」なんて言われながらも、「だって楽しいじゃん」と返すしかなく、それ以外の答えは思いつきません。いまだにその時の仲間とはたまに連絡をとったりします。
こんな経験めったにないですよ。人生の2か月くらい、こんなことしてもいいんじゃないのかなぁ。ねぇ?

>>次の記事→片足の私に迫りくる、最大のピンチの瞬間

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