【年越し】正月のタイで見知らぬ男の部屋に閉じ込められそうになった話

紅白歌合戦、ゆく年くる年、除夜の鐘に初日の出、おせちを食べて、初詣。
毎年恒例の穏やかな年越しもいいですが、忘れられない年末年始を過ごしたことはありますか?そう、こんなふうに!
(※今回もやばいです)

無敵のタイ・カオサン通り

12月下旬のタイ・バンコク。旅を始めて16ヶ月経過、孤高のバックパッカー気取りだった私も、日付が変わる瞬間は誰かと騒ぎたい気持ちに駆られていました。しかし予定はまるでなし。連れ添う仲間もいない私の頭に浮かんだ場所は全旅人が大集合する聖地「カオサンロード」。ここなら何かが起きるはずだっ(そして当然のように起きました)。

同部屋の男女8人

元日を挟んだ5日間、運よくお寺の裏にある安宿エリア・通称テラウラ(↑上図参照)の安宿を確保。

一泊1,000円前後のドミトリー部屋には、20代後半の欧米人たち。アメリカ人1人、オランダ1人、イギリス人3人、デンマーク人2人、そして私の男女8人は自己紹介もそこそこに本題へ。

「ねえ、これからどうする?」

12月30日、作戦会議という名のパーティーが始まる

とにかくバンコクでスペシャルな年越しをしたいという目的を持つ同士たちの結束は固く、契りの盃(?)を交わすことに。今までの旅、これからの予定、祖国での正月の過ごし方、仕事は兄弟は恋人は…5ヶ国から集まった若者たちの話は尽きることなく、運ばれてくる料理と酒は全て胃袋の中に消えていき、今はここで全てを楽しむだけの最強の8人。目についた適当なバーをハシゴするほど酒は強くなり、タイ定番のバケツカクテル、テキーラ、トランプの罰ゲームは恥ずかしい下ネタ。暑くて熱い、残り24時間の始まりです。

12月31日、カオサンロードはカオスそのもの

昨日は一体どうやって帰ってきたかもわからない最強の8人は、午前中のほとんどを寝て過ごしシャワーを浴びてなんとか人間の形を取り戻します。まるで今年最後の日とは思えない1日のスタート。

「さて、これからどうする?」

↑あれ?このセリフどこかで聞いたような?

今年もあと3時間、カオサンロードにはこれ以上ないほど人が溢れかえります。もうお互いの声が聞こえないほどの喧騒の中、観光客と現地人が入り乱れながら、土産屋、レストラン、バー、ディスコの隙間へ体を押し込めて、ビールだと思っていたものは謎の強い液体に姿を変え、日付が変わる瞬間までしゃべり続けます。合言葉は「はぐれたら宿で集合」。

こぼした酒も、滝のように流れる汗も、一瞬で乾くのは気温のせいか興奮のせいか。眠らない街・バンコクがどれだけパワフルか、行ったことのある人ならご存知ですよね?

カウントダウン、後は野となれ山となれ

いよいよカウントダウン。3、2、1…ハッピーニューイヤー!
ドドド!街頭スクリーンに映し出される花火、スピーカーからは爆音のタイポップミュージック、ハグしてキスして肩を組んで走り出す人々、すしづめのクラブでは老いも若きもレディーボーイも、明日は来ないかのように踊りまくり、私はサンダルの片方無くすというありさま(マジ気がつかなかった)。

現地人もエンジン全開

気がつくとイギリス人2人とデンマーク人2人はもういなくなっており、知らないうちに謎の現地人が混ざり込んでいるという状態に(もうこの辺からまともな写真はありません)。カオサンで仕事しているという中国系タイ人のワンくん(仮名)は気前よくみんなに酒を振る舞い、本人もやたら楽しそう。こっちこっち!空いてるバーがあるからさ!とご機嫌の様子。

タクシーに乗って次のバーへ。…あれ?

みんなは後からついてくるから大丈夫!先に行こう!と、ワンくんはタクシーを捕まえ走ること15分。周りは真っ暗、どう見ても住宅街。バーとか全然ある様子じゃないけど?
車が止まった場所は、やや大きめな一軒家の玄関前。ワンくんは「ハイどーぞ」と扉を開ける。これって絶対お前んちじゃん!!

部屋へ通され、彼は…

大家族なのか(実家っぽい)玄関には大量の靴が散乱しており、すぐ脇の自室にサッと入ってしまった彼。立ち尽くすわたし。みんなとはぐれ、深夜2時、どこかもわからないタイ人の家まで来てしまった元日…。ここまで来たら仕方ない、とりあえず入るか(謎の状況判断)。椅子に座ってとりあえずおしゃべりしよう〜などとあっけらかんとしているワンくん。

これは…監禁!?

こういう時にはなぜか図太くなるわたし。「バーだと思って来たんだから!ビールちょうだいよ」と缶ビールを買いに行かせ束の間のシンキングタイム。さてどうする。しかしあっという間に戻ってきたワンくん。ぐぬぬ…ここは相手が先に潰れるのを待つ作戦だ。グビグビ…

適当に話を合わせ、ころあいを見て「もうこんな時間だからそろそろ帰るよ」と立ち上がると、ワンくんは扉の前に立ちはだかり「お願い!行かないで!」と鍵をかけて私にベッドに座れと指示しました。走る緊張。

(これは…監禁!?)

動かない私の横に彼は寝そべり、頭を私のももに置きました。

彼はほろりと涙を流した

ひざまくらをしてもらい安心したのか、ポツポツと身の上を話し始めたワンくん。

「彼女がいるんだよ、同じ中華系タイ人の。彼女は仕事で海外にいて…電話も少なくなって…僕はもう…独りになりたくないんだ…」

彼はほろりと涙を流したと思うと、体を揺すっても起きないくらい深く眠ってしまいました。
「人はみな寂しさ抱えて生きてるんだ…」などとどこかの歌の歌詞のようなことを考えながら、国が違っても、誰かを想い孤独に涙する彼に同情しつつ、音を立てないようにそっと部屋を出て適当なサンダルの右足を拝借(ごめん)、夢中でタクシーを拾い宿に戻ると、真っ暗なドミトリーの自分のベッドに倒れ込みました。

クレイジーニューイヤー、ぶっちぎりの1位

翌日、最強だった(過去形)8人はベッドの上でピクリとも動かず、しかしうっすら目を開けてお互いの存在を確認し、まぶたをとじるを繰り返し、スーパークレイジーな年末年始は幕を閉じました。
時間も場所も出来事も、バラバラの記憶の断片をつなぎ合わせた8人の報告会をしなくてはいけません。

「…さて、これからどうする?」

↑あれ?このセリフどこかで聞いたような?

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